リックは座り込んで朦朧としていた。小さな声でニーガンに殺してやると言い返すリック。ニーガンの手には血に濡れたルシールがあった。彼は自分の右腕とも言えるサイモンに持っている武器を尋ねる。サイモンは手斧だと答え、それを求められるままにニーガンの手に渡す。
そしてニーガンはリックの襟を引き、彼を引きずるようにしてキャンピングカーへと入っていった。二人がいたその場所には、人だったと思われる肉片が残されていた。
ニーガンがキャンピングカーを走らせるうちに夜が明けた。車が時々ウォーカーを跳ね飛ばす姿を見るたびに、記憶がフラッシュバックするリック。やがてニーガンはウォーカーのうめきが聞こえるどこかに車を止め、手斧を外に投げた。そして、リックに斧を取って来いと言って、外に出ていかせる。
そこは救世主を避けながら車を走らせるうちにたどり着いた、陸橋のたもとだった。首を吊られた男はすでにウォーカー化している。リックは時折仲間の一人一人の顔がフラッシュバックしながらも、数体のウォーカーともみ合い、しかしながら、何とかキャンピングカーの屋根に登って安全を確保する。ニーガンは車の中から屋根の上にいるリックに、現実を見ろと言う。
思い出したくもない瞬間を思い出すリック。ニーガンが自分の仲間のうち一人を無作為に選んだその時。
選ばれたのはエイブラハムだった。ルシールをエイブラハムの頭上に全力で叩きつけるニーガン。バットを2度振り下ろされたエイブラハムは倒れるが、ニーガンは執拗にその頭部を殴り続ける。やがてエイブラハムの頭部は原型をとどめないほどにつぶれてしまった。
血の付いたバットをロジータに見せつけるニーガン。その姿にダリルは怒り、立ち上がって彼をこぶしで殴る。すぐにダリルは取り押さえられるが、命は奪われなかった。
ニーガンはほんの一瞬だけ自分が寛大であるかの様子を見せるが、振り向きざまに今度はグレンを殴りつけた。頭をつぶされ、片目が飛び出しそうになったグレンは、生を諦め、代わりにマギーに「生まれ変わってもまた君を見つける」と苦しそうに言う。
グレンにも何度も何度も打撃を加えるニーガン。ルシールは吸血鬼バットだと、恍惚とした表情で言うニーガンに、リックの仲間たちはすすり泣くことしかできなかった。
キャンピングカーの中から、斧を持って戻って来いという声が聞こえる。今度こそ言うことを聞く最後のチャンスだと言いつつ、ニーガンは中から屋根の上に向かって銃弾を放った。
リックは慌てて屋根から飛び降り、近くで首をつっていたウォーカーに飛びつく。そのウォーカーにかみつかれないようにするが、すぐ下にはウォーカーの群れがあり、絶体絶命と思われた。
しかし、ニーガンが車の中から足元のウォーカーを掃討するように自動小銃の弾を放ち、リックは一命をとりとめる。草むらに投げ捨てられた手斧を拾ううちにも最悪のイメージが頭の中に浮かぶ。仲間が次々と殴打されるイメージだ。
斧を拾ってキャンピングカーに戻るリックは鬼神のごとき暴れ方だった。近寄るウォーカーを斧と言わず素手と言わず退け、キャンピングカーの中に命からがら戻る。斧を受け取ったニーガンは喜びを隠さず、キャンピングカーを走らせる。
元の広場に戻ったニーガンは、いつか必要になると言って、斧をリックに渡した。
ニーガンは外に出て、今度はリックの仲間たちの後頭部に銃を突きつけるように部下たちに指示を出す。そして、カールに向かってそばに来いと言う。そして左利きかと彼に問い、違うと答えた彼の左腕にベルトを巻いた。そして、カールをリックの隣にうつぶせにさせ、左腕の前腕にマジックで線を引く。
何をやろうとしているのか想像がついたリックはやめてくれと言うが、ニーガンはやるのは自分じゃないと言って、リックに斧を持つように指示を出す。
どんなに許しを乞うても息子の腕を切るように言うニーガン。やがてリックは泣き出すが、仲間の命と引き換えに息子の腕を切断するため、斧を振りかぶる。
そのときニーガンがリックの顔を覗き込み、「誰がボスか分かったか?」と問いかける。激しく動揺し、放心状態のリックは、ひたすらにうなずき、ニーガンが満足するようなおびえた目を向ける。
ニーガンはその目が見たかったと言って、カールの腕の切断は求めなかった。代わりにダリルを自分たちの車に乗せ、今後逆らうことがあれば彼の命はないと脅す。そして、一週間後に貢物を取りに行くと言ってその場を去っていった。
キャンピングカーは奪われなかったものの、残されたリックたちには何も残っていないも同然だった。
やがて体調のすぐれないマギーが最初に立ち上がり、ヒルトップに行くと言う。そして、メンバーたちは協力してエイブラハムとグレンの遺体を葬った。